では次に，以下の問題を解くモデルに拡張しよう。このモデルを解くためには，上位の桁からCarryを受け渡す処理が必要になる。実際に，自分がどのような計算処理をしているのかを内省しながら，モデルを構成してゆこう。

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ゴール遷移は，Basic ModelにCarry処理に関わるゴールが加わることになる。

• LeftCarry
  Carryを取ってくるために，Focus行を左に移動させる。
  
• GetCarry
  Carryを取ってくる処理。Focus行の上の数字から1を引いて，Focus行を右に戻す。
  
• PutCarry
  Focus行に左から取ってきたCarryの10を足す。
  

ゴールの遷移に伴う問題の処理のプロセスは以下のようになる。赤→はFocus行，青→はProcessing行を指している。

一つひとつのゴールに対応づけて，ルールを記述してゆく。以下に具体例を示す。

• 処理している行の上の数字と下の数字を比較して，下の数字の方が大きければ，ゴールをLeftCarryに移動させるルールである。
  

IF
ゴールがFindDifferenceで，
Processing行（=Focus行）の上の数字が下の数字より小さければ，
THEN
ゴールをLeftCarryに変更せよ。

IF節

(Goal FindDifference)
(Processing ?C)
(Focus ?C)
(Slot ?Nlower # #)
(Slot ?Nupper # #)
(*test-smaller # #)

THEN節
(*delete (Goal FindDifference))
(*deposit (Goal LeftCarry))

IF
ゴールがLeftCarryで，
Focus行がの左の行が見つかれば，
THEN
ゴールをGetCarryに変更し，
その行を新たなFocus行とせよ。

IF節
(Goal LeftCarry)
(Focus ?C)
(Leftof ?Cleft #)

THEN節
(*delete (Goal LeftCarry))
(*deposit (Goal GetCarry))
(*delete (Focus ?C))
(*deposit (Focus #))

• Focus行の上の数字が0でなければ，その数字から1を引いてFocus行を右に移動させる。
  

IF
ゴールがGetCarryで，
Focus行の上の数字が0でなく，
その数字から1を引いた数字が見つかり，
Focus行の右の行が見つかれば，
THEN
ゴールをPutCarryに変更し，
現在のFocus行にその1を引いた数字に変更し，
右の行を新たなFocus行とせよ。

IF節
(Goal GetCarry)
(Focus ?Cfocus)
(Slot ?N # ROWUPPER)
(*test-not-equal ?N #)
(Sum # ?Nsubone ?N)
(Leftof ?Cfocus ?Cfocusright)

THEN節
(*delete (Goal GetCarry))
(*deposit (Goal #))
(*delete (Slot ?N ?Cfocus ROWUPPER))
(*deposit (Slot # ?Cfocus ROWUPPER))
(*delete (Focus ?Cfocus))
(*deposit (Focus #))

• Focus行の上の数字が0ならば，Focus行をさらに左に移動させる。
  v

IF
ゴールがGetCarryで，
Focus行の上の数字が0ならば，
THEN
ゴールをLeftCarryに変更せよ。

IF節
(Goal GetCarry)
(Focus ?Cfocus)
(Slot ?N # ROWUPPER)
(*test-equal ?N #)

THEN節
(*delete (Goal GetCarry))
(*deposit (Goal #))

• PutCarryは，Focus行とProcessing行が一致しているか（Focus行がProcessing行まで戻っているか）否かで，次のゴールの設定が変わる。前者の場合には，ゴールをFindDifferenceに移し（PutCarry1の処理），後者の場合は，ゴールをGetCarryに移す（PutCarry2の処理）。
  

IF
ゴールがPutCarryで，
Focus行とProcessing行が一致していて，
その行の上の数字に10を足した数字が見つかれば，
THEN
ゴールをFindDifferenceに変更し，
上の数字をその10を足した数字に置き換えよ。

IF節
(Goal PutCarry)
(Processing ?CProcessing)
(Focus ?CFocus)
(*test-equal # #)
(Slot # # #)
(Sum # ?N ?Naddten)

THEN節
(*delete (Goal PutCarry))
(*deposit (Goal #))
(*delete (Slot # # #))
(*deposit (Slot # # #))

IF
ゴールがPutCarryで，
Focus行とProcessing行が一致せず，
その行の上の数字に10を足した数字が見つかれば，
THEN
ゴールをGetCarryに変更し，
上の数字をその10を足した数字に置き換えよ。

IF節
(Goal PutCarry)
(Processing ?CProcessing)
(Focus ?CFocus)
(*test-not-equal # #)
(Slot # # #)
(Sum # ?N ?Naddten)

THEN節
(*delete (Goal PutCarry))
(*deposit (Goal #))
(*delete (Slot # # #))
(*deposit (Slot # # #))