通信路を介した人間/エージェントとの協同問題解決行動に関する実験的検討

350303150  馬場由枝

論文要旨

本研究では、人間が協同作業を行う際に、協同相手からどのような影響を受けるのかを 実験的に検討する。協同作業において、パートナーはパフォーマンスや問題解決プロセス に影響を及ぼす重要な要因である。とりわけネットワークを介する状況下では、協同相手 に対するイメージと実際の協同相手が異なる場合があり得る。具体的には、通信相手が人 間であると思っていたのにも関わらず実際はコンピュータ・プログラム(エージェント) であったり、またその逆に人間ではないと思っていたのに実際は人間であったりという状 況である。 本実験では、ネットワークを介し協同で問題解決を行える環境を設置し、教示によって 協同相手のイメージを操作することで、 協同相手のイメージが協同問題解決に影響を及ぼすのか、 また協同相手の問題解決の方略によって 被験者の問題解決方略に影響が及ぶのか、 協同作業としての問題解決行動に違いが現れてくるのか を調べた。 実験課題としてはルール発見課題を用い、特に仮説形成プロセス、仮説検証プロセスに 焦点を当て、仮説検証において実験方略は変化するのか,仮説形成において相手の仮説の参照程度は変化するのかという点に着目する。 実験の操作要因は、実際の協同相手(人間、Positive test エージェント、Negative test エージェント)の3水準×教示による仮想の協同相手(人間、エージェント)の2水準で ある。被験者は授業の一環として実験に参加した大学1年生96名で、被験者は無作為に 各条件に割り振られた。 実験の結果をまとめると以下のようになる。 (1)協同相手が変化しても、仮説検証におけるPositive test への偏重といった人間の行 動に現れるバイアスはほとんど変化を受けないことが分かった。 (2)その一方、協同相手の仮説の利用といった、協同相手からもたらされる情報の利用 の程度は変化することが明らかになった。 (3)しかしこれらの点に関して、どのような協同相手と協同していると考えているのか という教示の効果は見られなかった。