第6章 モデルによる行動の説明


認知モデルは,人間の心の中で起こっている情報処理に関する仮説を,検証可能な形で提起します。ここでは,Tower of Hanoiという人間の問題解決研究の中でたびたび用いられてきた課題を使って,それを実際に検討してみましょう。

まず第1段階として,皆様にTower of Hanoiという課題を解くエキスパートになっていただきます。

Tower of Hanoiを解決するいくつかの方略が知られています。今回は,その中から,Perceptual strategyという方法を学びましょう。

(1) Goalを設定
(2) Goalを達成できるかどうかを判断
(3a) Goalを達成できる場合(CAN),それを実行。(1)に戻る。
(3b) Goalが達成できない場合(CANNOT),Blocking Diskを同定して,それを退避する新しいGoalを設定。(2)に戻る。

Blocking Diskとは,ある目標を達成することを阻害しているDiskのうち,最大のDiskがそれにあたります。Blocking Diskを退避するとは,あるDisk(ターゲットディスク)をあるペグ(ターゲットペグ)に移すGoalに対して,Blocking Diskをターゲットディスクがあるペグ,およびターゲットペグ以外のペグに移すことを言います。


問題

ハノイの塔(Tower of Hanoi)とは,以下の3つの条件を満たしながら,ディスクを目標状態まで移動させる課題です。

例えば,次のような問題を考えましょう。


まず,最終目標であるペグCにない一番大きなDisk6を,ペグCに移動するという目標を設定します。
First, set a goal: the largest Disk6 on Peg C.

上の例では,まずDisk6(赤いディスク)をペグCに移動するというゴールに対して,それを阻害しているDisk(ブルーのディスク)のうち最大のディスク5がBlocking Diskになります。従って,そのDisk 5をペグBに退避するというGoalを設定します。
Goal is Disk6 (red disk) on Peg C. Disks blocking the Disk6's movement are identified (blue disks). The largest disk, Disk 5, is the Blocking Disk. Subgoal is set up: Disk5 on Peg B (neither Peg C (Disk5) nor Peg A(Disk6)).

前段で設定されたDisk5をペグBに移動するというGoalに対して,それを阻害しているBlocking Disk3をペグAに移動するというGoalを設定します。
For a goal, Disk5 on Peg B, next Blocking Disk, Disk3, is identified. Set a next subgoal, Disk 3 on Peg A.

同様に,前段で設定されたDisk3をペグAに移動するというGoalに対して,それを阻害しているBlocking Disk1をペグCに移動するというGoalを設定します。
For a previous goal, Disk3 on Peg A, next Blocking Disk, Disk1, is identified. Set a next subgoal, Disk 1 on Peg C.

このGoalは実行可能なので,実際にDisk1をCに移動させます。
This goal is achievable, therefore actually move Disk1 to Peg C.

まだ達成されていない,直近のGoalを探し,それを次のGoalに設定します。今の場合,Disk3をペグAに移動するというのが次のGoalになります。
Search the latest another goal that has not been achieved; set the goal as the next goal. In this case, the next goal is Disk3 on Peg A.